人は花に何を想うのだろう。
花に想いを託した歌は、人々の心にどんな種をまくのだろう。
pigstarのニューシングル「君=花」(キミハナ)。
このタイトルに表されている通り、ここで彼らが歌っているのは“君という名の花”への大きな愛情と、その愛情に裏打ちされたまっすぐなメッセージだ。
“君”とはすなわち今これを聴いているあなたであり、私であり、おそらくは彼ら自身のことでもあるだろう。生きることに臆病で強がってばかりいる“君”を、諌めるのではなく、否定するのでもなく、ただ真っ正面から受け止める。ありのままを抱きしめ、手に手をとって共に歩いていこうと誓う。そうして彼らは“花”というものに生きる力、よりプリミティヴな正のエネルギーを見いだそうとしているのだと思う。
綺麗事だけを並べてもこの歌にはならない。キラキラとして耳に心地いいだけの薄っぺらな応援歌では誰の背中も押すことができない。やるせない現実とか、ともすれば容易く挫けてしまいそうになる自意識のか弱さとか、日々の痛みや苦渋をちゃんと知っているからこそ生きることを諦めない、ありのままの自分であることを手放さない、これはそういう人の歌だ。背筋を正し、覚悟を決めて吐き出された透明な想い。そう、だからこの歌はとてもやさしく、力強い。
と、ここまで書いておいて白状すると、筆者はまだ彼らに会ったことがない。それどころかこの楽曲に出会うまで、恥ずかしながらその存在を知らないまま過ごしてきてしまった。だが、であるがゆえに先入観というものにもまるで左右されず、実にニュートラルな状態で聴けたことは得難い幸運であったと思う。まっさらで、ある意味無防備だった心のど真ん中に刺さってきた「君=花」。結成8年というキャリアに裏打ちされた確かな音楽性――線の太いポップなメロディ・ラインと、張りのある端正な歌声、それらを足元からがっしりと支える武骨なバンド・アンサンブル。ロック・バンドとしてはかなり品行方正な佇まいだが、過去の音源を遡るにそれだけではない不敵な何かをはらんでいるようにも思える。重厚なストリングスも印象的なカップリング「gore」に滲む、より内省的な世界観もしかり。思えば“pigstar”というバンド名にもちょっとただ者じゃないセンスを感じてしまう。一言でいうならば、底知れない。実に興味深い出会いとなった。
pigstarという名の音楽にあなたは何を思うだろう。
彼らが心にまいた種は、この先どんな花を咲かせるだろう。
今はそれが楽しみだ。
(ライター 本間夕子)
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